遺産分割協議書作成 ~こんな場合はどうすれば~

遺産分割

事例(1) 相続人の内、海外在住者がいる

印鑑証明

夫の相続手続きに際して、知人や市役所の無料相談等を頼って、遺産分割協議書なるものを自分で作成したIさん。遺産分割協議書を手続きに使用するには相続人である息子2人の実印と印鑑証明書が必要です。しかし息子の1人は長期の海外勤務のため、住民票も海外に移しており、印鑑登録も解消してしまってるとのこと。

この場合はどうすればいいのか困っています。

事例(2) 登記手続きに不適切な協議書

実印

会社を経営しているYさん。父の相続が発生したため、会社の顧問税理士に相談して、遺産分割協議書を作成してもらいました。銀行や株の相続手続きが完了して、実家の名義換えを司法書士に依頼しようと遺産分割協議書を持参すると、司法書士より、「残念ながらこの協議書では登記申請には不適切です。別に作成が必要となるので、改めて相続人全員に実印を押してもらって下さい」とのこと。

他の相続人はみんな遠方に住んでいるため、書類のやりとりが面倒だなと困っています。

事例(3) 未成年者がいる場合の遺産分割協議

マイホーム

サラリーマンの夫を亡くしたTさん。主だった遺産はマイホームであるマンションのみ。子供は5歳と2歳の2人。住宅ローンはローン専用の生命保険で完済できたので夫からTさんへの名義換えをしようと司法書士に相談したところ、遺産分割協議をするためには2人の子供に「特別代理人」というものを立てないと進めることができないと言われてしまいました。しかも子供がまだ小さいからと言って母親であるTさんがすべて遺産を相続できるわけではなく、特別な事情がない限り、法律で決められている子供の相続分(1/4ずつ)を確保する内容でないと裁判所に認めてもらえないとのことでした。マイホームを相続する代わりに子供には他の財産を相続させなければならないと言われてもマイホーム以外の遺産がなければどうすることもできません。

事例(4) 遺産分割協議後に手続きに協力してくれない

困る人

父親の遺産を分割するのに兄弟間で何度も話し合いようやく誰がどのように相続するかが決まってほっと一安心のAさん。遺産分割協議から数年経ったある日、自分が相続することになった土地の名義換えのため、司法書士に相談に行きました。
司法書士からは名義換えの手続きに必要なものを聞き、他の相続人から実印を押してもらうべき書類があったため、久しぶりに兄弟へ連絡を取りました。しかし、「今忙しいからまた今度」と軽くあしらわれてしまい判子がもらえませんでした。その後も折を見て連絡しますが、その都度断られ、しまいには「じつは、俺が欲しかったんだよねその土地。近くで開発があってすごく地価が上がっただろ。いいよなお前は。」などと言って、済んだ話を蒸し返そうとしてきました。

こんなことなら遺産分割協議がまとまった後、すぐに手続きしておけば良かったなと、Aさんは後悔しています。

遺産の分け合い(=遺産分割協議)

遺産分割

遺産がどれだけあるか把握できた後は、どう分けるかです。そして相続手続きの一番の山場でもあります。

ここを乗り切れるかで「相続」が「争続(族)」になってしまいます

遺産というものは法律で定められ相続分(=法定相続)によらなくても、相続人全員が話し合いによって自由に相続分を決めることができます。

相続人たちがそれぞれの相続分を決める方法としては、下記の3種類に分けられます。

  • 現物分割
    遺産をそのまま分けることです。現金を等分にすることは容易いですが、1つの貴金属、骨董品などは切って分けるわけにいきません。不動産は共有とすれば可能かもしれません。
  • 代償分割
    上記の貴金属等そのものを分け合うことができない場合に、誰か一人が相続して、他の人にはそれに見合ったお金を渡すことをいいます。(現金による支払であれば譲渡所得税がかかりません)
  • 換価分割
    代償分割するためのお金が用意できない場合には、対象となる遺産を売って現金化してそのお金を分けることもできます。これを換価分割といいます。(この場合は譲渡所得税がかかります)

遺産分割協議書の作成

めでたく遺産分割協議が整ったら、内容を忘れないために書面にします。
特に遺言書のように厳格なルールはありませんが、作成のポイントとしては次のようなことが挙げられます。

  • タイトルは『遺産分割協議書』とし、亡くなった方の氏名、本籍、最後の住所、生年月日、死亡日を明記する。
  • 誰がどの遺産を相続するのか具体的に記載する。
  • 不動産の記載は登記簿謄本(履歴事項全部証明書)もしくは手元の権利証の記載を参考に正確に記載する。(「○○市の自宅」とか抽象的な記載ではだめです)
  • 預貯金、投資信託などの有価証券も通帳や取引明細書などを参考に正確に記載する。(残高については必ずしも記載しなくて大丈夫です)
  • 最後に相続人全員が住所、氏名を直筆で記入し、実印を押す。
  • 代償分割の場合は誰にいくら支払うのか、その期限は、もし遅れた場合はどうするか
    (代償の場合はしっかり「代償である」ことを明記しないと税務署に認めてもらえない場合があります)

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